『隻眼の少女』&歌集『絵地図』(上杉和子)
『隻眼の少女』を購入・読了。すばらしく本格でした。完全に騙された私はいたって善良な一市民であると再確認。

- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/09/30
- メディア: 単行本
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歌集『絵地図』(上杉和子)は先月末にいただきました。ありがとうございました。河野裕子最後の序文が巻頭を飾っている。
10首選
こんなにもふとき雨ふるといふに濡れてゐないやうに白百合のはな
しろい月のやうな伐り口積まれゐて貯木場もうしろの山も時雨
わづかながら傾いでしまひし我家にて足が知りゐる廊下と違ふ
繰り返される度に演技は良くなるか 若葉の桜に凭れて眺む
洗濯挟みに干されゐる烏賊と白アナゴぴつぴつと引つ張りわれに呉れたり
骨粗鬆症の母のはかなき白骨の大腿骨に沿ふ金属(かね)の板
亡母の名の薬袋の葛根湯をりをりに飲みまだ少し残る
水の辺の桜の幹をかぎろひは昇るやうにも降(くだ)るやうにも
山裾の植木畑にひとひとり古い畳をぐすぐす燃やす
金柑は蜜柑の木よりあかるいよ紀伊ゆく車窓にうつらうつらして
以下雑感
- 意外に定型を外した歌が多い
- 旅行詠が多い
- 「没か歿」「昇るやうにも降るやうにも」の一連がよかった