森本あんり『反知性主義』

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)


この本はお勧めである。
あとがきから引用すると、

反知性主義の「正体」には、今の日本で流布している意味内容からは思いもよらない肯定的で正当な要素が含まれている

ということであり、
本書を読んだあとでは、「反知性主義」ということばを、軽々しく使えようがないはずだ。
本書からは多くの示唆を得たし、多くを学んだ。



また本書は、ともかく非常に読みやすい。文章が抜群に上手い。
なぜこうもストレスなく読めるのか、と考えて、筆者の略歴を見ると、牧師である、とのことである(ICUの副学長)。
そこで合点がいった。なるほどなるほど、息継ぎが的確なのである。
もし機会があれば、私はクリスチャンではないが、いちど説教を拝聴したいものである。


本書はまた、副次的に「ハリウッド映画史」の書にもなっている。
映画から語り起こすことには、無味乾燥になりながちなジャンルの話題を鮮やかにするという効果以上のものがある。


この本がベストセラーになるのは、それがたとえ、ミスリーディングを誘うための副題のおかげであるとしても、良いことであるだろう。
まさに、反知性主義的なビジネス精神の賜物である。