島田幸典『駅程』
- 作者: 島田幸典
- 出版社/メーカー: 砂子屋書房
- 発売日: 2015/10
- メディア: 単行本
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秋のはじめにいただきました。
ありがとうございました。
10首選(☆1首選)
電灯を落としつつゆく廊下ありて寝室[ねや]の明かりに妻とおち合う
白たまのいのちひとつというごとくフード被りて眠る人あり
石のほかなべて朽ちたる住宅に不全の感をわれは催す
雨あとをもどる日差しにしらほねの明るさをもて碍子は照れり
昼暗き厨にゆけば臨済の僧のごとくに焼酎の立つ
☆午まえの指標に安き患[うれ]えせりとおくかかわるを当然視して
朝空に錆びし白れん展[ひら]きけり天人五衰を見しむるがこと
梅雨の間のふところ深き青空に避雷針おお挑みて立てり
レインコートのベルトを締めてたちまちに海上自衛官の胴の細しも
平日の昼間の家に帰りきて誰もおらねば旅するごとし
- 妻の歌が多い。安定感のある相聞
- 馬の歌が多く、あるいは、糞尿譚がめだつ。
- これらは端的に「生」の領域の意味であり、そこが何らかの理由で圧迫を受けているときに、歌として現れる様子
- ロジカルに詞を組んでいるが、漢語が強勢であり、濃縮感がある。
- 電柱の柱の根が、姿をあらわしている部分の倍あるようなイメージ
- 単語や発想じたいにタイミングと距離の定まった飛躍があり、理解が届かない場面でも、信頼があるので捨てられない
- カタカナや一字明けは極小で、韻律を文語に預けている
- 電柱の柱の根が、姿をあらわしている部分の倍あるようなイメージ
- 鉄道・軍・城・藩などのワードで囲まれる小世界があって独特
- 個人的にはたいへんよくわかる(ような)世界
- いっしゅの理性なのではないか(混沌や悪に対する)
以上です