世代論


黒山もこもこ、抜けたら荒野  デフレ世代の憂鬱と希望 (光文社新書)

黒山もこもこ、抜けたら荒野 デフレ世代の憂鬱と希望 (光文社新書)


勝ち組&負け組とかロスト・ジェネレーション絡みの世代論を対象にした
お手軽社会学系の新書は出せば売れる状態なのか乱立気味ではありますが、
私も他人事ではないのでこっそり読んでます。


本書は1970年生まれの研究者・詩人(女性)の作。
エッセイにかなり傾いてはいるが数字を出してこないわけでもないといった按配。
さくさく読めます。


一番の特徴はバランス感。
この手の話は著者によって両極端に振れやすく、やや食傷気味でした。
一方では、高みからのものいいで揶揄的にぶった切ってみせた後に
おざなりな同情を示してみせたりとまるで血の通っていないタイプがあり、
もう一方ではとりあえずルサンチマン大爆発で、
自傷的でなければ無闇と「他者」に攻撃的なタイプがあり、と
単純に読後感がよろしくなかったわけです。
本書は、自らの世代を語るにユーモアを交えつつ自虐的にも声高にもならず、
かといって遠慮しているわけでもなく、「デフレ世代」の苦しさを
率直にかつ等身大で伝えてきており、好感がもてました。
おそらくは「伝えたいことが伝わり難いことがよくある」
ということを表現者としての経験からよく知っているからこその
スタイルではないかと思われました。


まあ、短歌においてもかくありたいと思った次第です。