股旅フットボール

股旅フットボール


傑作。

(追記)

では、本書がなぜ傑作なのか。
数多のサッカー本はサッカーそのものについて語る。
あるいはサッカーの試合から離れられない。
当然だ。
だが、サッカーはピッチ上だけでおこなわれるものではない。
端的には「オフ・ザ・ピッチ」という概念があり、
これは例えば試合以外の基礎トレーニングの有用性を説いたりするために用いられるわけだが、
選手という枠をはずしてもっと視野を広くとってみると、
この言葉は地域におけるサッカークラブの存在意義だとか
スポーツと人生の幸福な関わり方とはいかなるものなのか、
といった問題提起につながっていくものになる。
ピッチの外で何がおきているのか。
地方のさまざまな小さなクラブを取り巻く人々や環境、野心や事件を
手際よく紹介する著者の手腕はすばらしい。


そもそも、こういった視点でサッカーを書ける人物自体がいまだ稀有なのである。
本書では再三「サッカーの地政学」という言葉が出てくるのだが、
これは著者の志の高さをいみじくも示しているといえよう。
"J4"とでもいうべきカテゴリのチームの「光と影」は、
ときに鮮やかで、読む者に強く訴えかけてくる「物語」に昇華した。