歌集『はるじょおん』(荒井直子)&角川短歌年鑑2011

歌集『はるじょおん』(荒井直子)は今月初めにいただきました。
ありがとうございました。


10首選


笑い声 ハ行変格活用の「エヘヘ」が君には一番似合う
お向かいの席の人がいじわるなのかやさしいのかも見分けられない
「建ぺい率」とか言っとけば気に入ってもらえると思ってたんだ君に
エスクとは漢字で書けば《愛淑》で名前どおりのお嬢さんなり
夫には斜めになって寝る癖があるそれも吾から離れる方に
幾重にもキャベツが芯を巻くように私は胎児をくるんで太る
直歩直歩と呼びかけおればみどりごはだんだん直歩という顔になる
子を打ちたい衝動がよく起こり来てごく時々は本当に打つ
迷惑を親にかけぬため亡くなったんですよと言える看護婦を憎む
身体とはげに素直なり娩出をすればすなわち母乳が出ずる


以下雑感

  • ずらっと下まで一直線の散文タイプの短歌
  • 「淡水魚」の一連が良かった
  • 気合の入っている社会詠よりも実は相聞のほうがよい


今年の角川短歌年鑑を読む。
岡井隆さんと川野里子さんが『地球光』を取り上げてくださっている。
ありがとうございます。
あと、光森さんの『鈴を産むひばり』が凄すぎて
『地球光』の出番はないこともよくわかりました。
河野先生にも捧げた人にも見てもらうことができなかった可哀想な子ですが、
次の歌集の糧にはなってくれるでしょう。