映画『ノルウェイの森』

http://www.norway-mori.com/index.html
観てきました。


以下、映画未見のかた、原作未読のかた、ネタバレしてますのでご注意ください。



よござんすね?


基本的に良かったと思う。
ショートカットが多すぎて、原作を未読もしくは一読ぐらいのかただと
何がなんだかわからなくなる可能性はある。
結構観客にストレスがかかるタイプの映画である。
脳内補正をかけていける人だと、場面転換に気を取られずに、
細部の作りこみにまで眼がやれるので、基本的には楽しめるだろう。
いわゆる「原作レイプ」と非難されるような映画ではなかったことは
申し上げておきたい。
まあ、レイコさんの扱いはすこおし酷かったけどな。


一方で重大な欠陥があるのも事実。それはキャスティングである。
もっとも簡単な解決作は直子役の菊池凛子と緑役の水原希子を交換することであろう。
理由は以下の通りである。


ノルウェイの森』は以降の日本の物語造型に決定的な刻印を施した記念碑的作品である。
それは主人公(おもに男性)が二人の他者(おもに女性)の間で揺れ動く物語であり、
他者二人の人物造型にその特徴が現れる。
主人公(ワタナベ)に対し、
他者A(直子)は、内向、神秘的、病的、主人公との強い因縁、などで分類され
他者B(緑)は、外交、現実的、健康的、主人公との一回的出会い、などで分類される*1
この物語構造の特徴は、はじめから歪んでいる、ということにある。
つまり、放っておけば、主人公は必ず他者Bを選ぶということである。
物語の緊張状態を保っておくために、作者は必ず他者Aに「ギフト」を与えることになる。
そうしないと他者Aと他者Bの天秤は他者Bに傾きっぱなしということになるからである。
このときに使用される「ギフト」のうち、最も単純なものは「容姿」「性的魅力」であり、
ノルウェイの森』の原作は直子に対し、この「ギフト」を与えている。


しかるに、映画『ノルウェイの森』では、直子役の菊池凛子は演技力では勝っているものの
「容姿」では水原希子に劣っている*2
なお、「性的魅力」に関しては、どちらもスレンダーな女性なので
差異を記号的にあらわすことは難しい。
これでは、ワタナベが直子と緑の間で揺れ動く理由がぼやけてしまう。
客観的に見て、直子は非常にウザい女性である。
現実の恋愛ではそういう女性にまともな男が引かれるというアンバランスさもアリではあろうが、
映画という商業的作品では、
やはりなにか客観的にそれを乗り越えるものが必要であろう、
と考える次第である。
したがって、本作はミスキャストであった、という結論が導かれる。。。


というようなことを考えながら、映画を観ておりました。あー、楽しかった。

*1:有名どころでは、エヴァにおけるシンジに対しレイ(A)とアスカ(B)、変ったところではナルトに対しサスケ(A)とサクラ(B)など

*2:反論は受け付けます