歌集『五番目の季節』(安藤純代)

歌集『五番目の季節』(安藤純代)は先月末にいただきました。
ありがとうございました。


十首選


この辻に虹見上げしはいつなりき耕耘機春の泥こぼしゆく
丹精の鉄砲ユリは音たかく茎をはなれて供花となれり
のこのこと参賀に賑はふ店に出て叱られをりぬ稲荷屋の猫
夏空はがらんと広き羽抜鳥 初戦敗退喫せし子らに
鍵の音はたと聞きつけ家猫が戻りくるなり野良猫つれて
ある時は理解及ばず一編の詩のごとくみる自閉症の息子
鳥は磁気に、われは時間に引き戻され夕べにわたる紺青の川
「障碍児を公立高校に入れる会」日向に開く冊子(パンフ)の薄さ
精霊の降臨しのび掌にとれば骨のやうなりイスラエルのパン
外つ国にいまも残るや讃美歌の「荒城の月」夜半に聴きたし


以下雑感

  • 障碍を持つ子、房総の自然、信仰が大テーマ
  • 四部編成だが、第I部、特に「ソメヰヨシノ」「若葉風」がよかった。
  • 語彙が豊富なため、読んでいて楽しい。子どもの歌は、もっとドロドロした部分を出しても、読者は受け入れたのではないだろうか。