『源実朝』(大佛次郎)

源実朝 (徳間文庫)

源実朝 (徳間文庫)


源実朝』(大佛次郎)は小説。


実朝はいうまでもなく『金槐和歌集』の作者であり、
定家と同時代人であり、
鎌倉将軍三代目であり、
悲劇のひとである。


大佛次郎はこの作品を戦中・戦後に書き続けており、
そのような背後もなかなか面白い。


実朝は北条義時に飼殺しにされ、
だからこそ歌にはまった、というのが定説になっているが、
実は歌よりはるかにマズいことをやっている。
それが渡宋計画である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%90%E5%AE%9F%E6%9C%9D#.E6.B8.A1.E5.AE.8B.E8.A8.88.E7.94.BB
文弱のぼんぼんが、とちくるって、
将軍を辞めて腹心の部下をつれて宋に渡りたいと言い始め、
実際に巨大な船を作ったものの、
船自体の作りが駄目で果たせなかった、という
歴史上トップクラスのコントである。
ところが、この渡宋計画の背後には
当時流行の補陀落渡海があったのではないか、という説にぶちあたり、
がぜん興味がでて本書を読み始めたわけである。


実朝を評価する向きはこれを低く見たり無視するのだが、
この幼く馬鹿っぽいところが実朝のキャラである。
金槐和歌集』読んだらわかる。


それで、大佛次郎はこれをどう料理するのかと思っていたら、
実に見事にこなしていた。
感心した次第である。


ただ、史上最強の朝敵であり、
日本史のスーパースターである北条義時のほうが、
小説上でも圧倒的に魅力的であった。
義時にくらべれば、実朝はコモノすぎるし、脇役にすぎない。
というわけで、いまは執権北条氏の本を漁っているところです。