『豊作』第三号


昨日着いていました。ありがとうございました。別の本を用意していたのですが、こちらを先にします。


岩の窪はひかり集めてつまらなしあの人はもう書かないのです(澤村斉美)
跳んでいるからにはむかしいたのだろう卵のなかに殿様蛙(柴夏子)
どのくらいジューシーだとか甘いとか酸っぱいだとか語ってほしい(井上雅史)
昼すぎのコインランドリーの脇道に厚みをもちてみづは匂へり(常盤義昌)
こんばんはたしかめて言うこんばんは割れそうなほど空の澄む夜(金田光世)
撰出の苦心抒べむと定家の右目大腫を信綱引けり(西之原一貴)
鍛え上げられし肉体が紹介されいる未明のテレビ(花山周子)
巾着の口をすぼめるごとくして寒気は街に満ちはじめたり(北辻千展)
朱に染まる頬憎むべし商人になりそこねたる青年ひとり(塚田雄一)


以下、雑感。

  • 全体に歌の数が多いので満足しました。新人賞の敗者復活だけではなさそうなところも素晴らしい。
  • 評論二編はどちらも完結していないので欲求不満です。花山さんの文体には良い意味でも悪い意味でも特徴がありました。
  • 合評の最後の「感想」には考慮の余地があるように思いました。


次号も期待しております。