『ミャンマーの柳生一族』(高野秀行)


ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)


ミャンマー民主化デモは邦人カメラマン「射殺」事件でトップニュースになってますね。
哀悼の意を捧げつつも福田政権も多難やなあ、と思いながら見ています。
昨日「朝まで生テレビ」を久々に見ていたんですが、
この話題が出てこなかったのが少々残念でした。


ところで何かとわかりにくいミャンマー軍政ですが、この『ミャンマーの柳生一族』はお勧めです。
作者は辺境探検家で、本作は作家の船戸与一ミャンマー取材旅行に同行したときの記録。
軍政を「江戸幕府」に例えて複雑怪奇なバックグラウンドを説明するやりかたは、
コミカルな旅行記のテイストを楽しみつつ大変参考になります。
文庫で安価なのもいい。椎名誠が好きな向きには鉄板です。
高野秀行ミャンマーものには正真正銘の奇書『アヘン王国潜入記』もあり、
これはいわゆる「黄金の三角地帯」と呼ばれるアヘン栽培地域に高野が出かけ、
そこを実効支配する「集団」のもとにホームステイして仲良くなりつつ
アヘンの栽培・吸引すらこなしてしまうという驚天動地のルポです。わずか10年前に。
本としての「格」はこちらが上でしょう。むさぼるごとく読めます。
そのほか、叙情的な『ワセダ三畳青春記』や先週文庫オチしたばかりの
UMA探索本『怪魚ウモッカ格闘記』もなかなか。


まあ無理やり短歌に結び付けなくてもいいかもしれませんが、
高野秀行の本を読んでいると、不偏不党の立場に立ちつつ
感情的にもヘンなテンションにもならずに社会的な出来事を記述でき
無味乾燥になるどころか面白いということが可能なのだと信じることができ
少し元気がでます。