風通し その1
各一首選
蕪畑 ぼくらの降りたバス停が錆びているのは初めてじゃない(我妻俊樹)
手品師の右手から出た万国旗がしづかに還りゆく左手よ(石川美南)
おもむろに君は小枝をひろいあげかわいた音を冬にかえした(宇都宮敦)
「アセトンに浸けたろか」的なツッコミが嫁とのあいだで流行る四、五日(斉藤斎藤)
ときどきは呼吸のようなことをしてアクエリアスを飲むのもいいね(笹井宏之)
こころのことを語れぬほどに暗かった二次会の店 朝に思えば(棚木恒寿)
おじさんは西友よりずっと小さくて裏口に自転車をとめている(永井祐)
ボウリング場でカッコつけたる日々のこと思ひだしをり蝉時雨止む(西之原一貴)
しゅーせーえき、と薄桃の舌で言われたり古き愛語のようにさみしい(野口あや子)
先月のいただきものです。ありがとうございました。
以下雑感
- 読者には読むのがつらい構成。
- ネット歌会は司会が入らないので、どうしても散漫になるのだが、対応はなされていない。
- 詞書が多い一連は成功しているとは思えない。
- 三人称やコンセプチュアルなものをやりたいのなら、素直に小説を書いたほうがいいのではないか。
- 『パーク・ライフ』みたいなのもあるわけだし。
- そもそも、短歌に「お手ごろ」「お手軽」感を感じているのだとしたら、これは軽蔑せざるを得ない。
- 三人称やコンセプチュアルなものをやりたいのなら、素直に小説を書いたほうがいいのではないか。
- その逆に、棚木作品に対する「人生劇場」という揶揄は、その手法が選ばれたことやこれまで蓄積してきたものに対する配慮を欠いているのではないのか。