短歌

トークセッション全記録

今週頂きました。ありがとうございました。 「塔」の5歌人5歌集がまな板の上にのって料理された 非常に濃い冊子。読むのに時間がかかったということは テープおこしも大変であったろうと思われる。お疲れ様でした。 内容はハイ・レベル。島田幸典の各章ごと…

砂漠の鶴

加藤楸邨の紀行文。読了。紙質が悪くて参った。 楸邨は文明らとともに昭和19年大陸に渡り、 報道記者(俳句でだが)的仕事をしている。 文明の動向もちょくちょく記述され、資料としては外せない本である。 だがそれ以前に、紀行文として面白い。 上海以降の帰…

三校

三校の原稿が来て、三回見直す。直すところなし。 あとがきが、肩が懲りすぎているような気もするが、まあいいだろう。 自分の歌を何度も読んでいると、良いのか悪いのかわからなくなってくる。 この感覚が、歌集を出したあとにくると噂の喪失感・落ち込みに…

青春埋葬

栞文が一本やってくる。素晴らしい出来。感謝。 「青春埋葬」という言葉があって、ああその通りだな、と思う。 去年・今年と苦しい年月ではあるが、 なにかしら世界に爪痕を残せるのは素直に嬉しい。

鉄とゆふがほ(岩野伸子)

ISBN:9784861981449 十首選 わすれ草つぎつぎひらき夏ふかし影のごとくに庭をめぐれり アル中の過去もつ人と知りしよりこころに近しモーリス・ユトリロ 手違ひの図面をめぐり男らの声昂ぶるを聞きつつ事務執る メジロ一羽の重さははがき四枚ほど 暑中見舞を…

再校2

改定一首のみ。 自分の歌を読み続けると知らず知らず自分の毒にやられてしまう。 こんなに身体に悪いことも珍しいのではないか、と思う。 ひとまず、終わり。明日、出版社に発送予定。

再校1

結局、やってしまう。 一首削って一首追加。ルビふり一個。カギ括弧一個。 まあ、あとは一週間おいてもう一度みてみることにする。

金色の橋(谷口純子)

ISBNなし 十首選 息子はかなき水色の空を仰げばめまいすと言う 小規模の地域スーパー統べる男ゲリラ戦士の気をはなちたる 水面をたたける雨水まっしろに無数にひらく水の唇 髭の男も髭のなき男もわらいおり 戦争で男は呵呵とわらう うたたねの夢の歌会に旧姓…

初校その2

1首場所移動、2首大幅改定、1首詞書追加、あとルビふり数首。で終了。 三回読み直したのでもういいだろう。 明日出版社に返送予定。 気付いたこと。 季節感めちゃくちゃ。 「他人の目」でみるとひどいものであった。 私のようにハンパなアララギ者だと、 歌…

土屋文明(大井恵夫)

ISBNなし。 1990年砂子屋書房刊。 考えつくことは既に誰かが手を付けているということがよくわかる一冊だった。 『山下水』には「川戸雑詠」という一連が柱をなしているのだが、 それを丁寧に読み込んだりしている。それ、やろうとしてましたよ。 それに、全…

初校

とうわけで初校である。 今夏には第一歌集を出版できると思いますので、 皆さまよろしくお願いいたします。 夏は歌集には向かない季節らしいがこればかりはめぐり合わせだ。 しったことか、という気分である。 歌一首を削り、もう一首を大幅改定する。 あと…

若冲の鶏(歌川功)

ISBN:9784861981319 十首選 鉄塔の四股を突きさし田をわたる高圧線の低く哭く声 存えて老耄(ろうもう)の母電話にて生き過ぎたよと洩らす寂しさ 笛太鼓空から音の降りくれば大祖祖(おおおやおや)の夏雲の湧く 泥水に泛(うか)び冴えたる寒月をくしやくしやにし…

ばんどり(なみの亜子)

ISBN:9784861981364 十首選 山上に集落あればたまさかにおばあを積みて降りくる軽トラ 休日は焚き火男となりにけるきみのフリースの燻製臭よ 橋の下ぶっきらぼうな暗がりに川音のなき川のあること 目を閉じて放尿したり はぐれたる小さき川の一本として 薪小…

西行の肺(吉川宏志)

歌集 西行の肺 角川短歌叢書 (角川短歌叢書―塔21世紀叢書)作者: 吉川宏志出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2009/08/22メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る 十首選 身ごもりし人の済ませし校正の厳しすぎる朱を元…

生活即短歌

戦時中、役に立つ短歌を求められた文明が、 戦後その価値を否定されたときに換骨脱胎して編み出した言葉。 悲しいリサイクル?それとも若干は本気だったのだろうか。 というわけで、文明評論第二回を脱稿。

文明、アッツ島玉砕直後の所感(1943.7)

△現在日本國民は誰も誰も平時の仕事に比べて何割かを加重して皆報國の誠を致してをる。中には我々の想像するよりもはるかに重い仕事に、日々耐へて居るといふことも聞いた。つまり、全てが戰ひ勝たむがためであって、それ以外のことは存在する餘地がない。人…

文明、日米開戦における発破

△ 此の國民的大感激を何を以てあらはさう。大和言葉の言靈の幸を受けて來て居る吾等は何を措いても短歌を以て此の湧き上がる衷心の感動を歌ひあらはすべきである。 △ 吾等は陸に海に現に戰ひつつある多くの會員諸氏を知つて居る。皇軍の武運長久を祈り、皇軍…

現代日本詩歌文学館再訪

寒い中、詩歌文学館に行き五時間かけて大量のコピーをとる(とってもらう)。 今日は昭和16-23年のアララギをコピーしてきたのだが、 これが復刻版であって、買えるものなら買いたいと思うものの 家に帰って調べると全巻揃いで70万円であった。まあ、これは安…

『駒鳥(ロビン)』(江戸雪)

10首選 人の声いつもとおくに聴こえてたチベット自治区酸素足りずに ほんのりとぬくい弁当抱きながら桜の声のあんこくを聴く 朝の窓飛ぶもの歩くもの眺め自死にあらざる果て口おもう ブログブログなんでもブログにかいている手ざわりのないかなしみなどを あ…

対峙と対話(大辻隆弘&吉川宏志)

先月いただきました。ありがとうございました。 HPで連載されていた短歌時評をまとめたブログ本。 色々なトピックを懐かしく読む。 本としていえば、あとがきと人名索引が面白い。 あとがきでいえば、大辻・吉川両名ともに〆ギリまで粘って耐え続けた二年間…

日ざかり(川本千栄)

10首選 身を反らし泣く子を何度も抱き直しもう用済みの乳房が痛む 湯の中に白く煙(けぶ)りて乳は噴き私とお前の蜜月終る 人の一生なんて皆くだらない子の絵本振って夫の陰毛払う 象を背に子を腕に抱き微笑める写真の女 妊婦の私 おばあちゃんが死ねばいとこ…

日本現代詩歌文学館

訪問しました。 http://www.shiikabun.jp/ かねてよりの懸案を解決するために『塔』のバックナンバーを漁りました。 昔の自分の歌がアホな感じで滅入りました。 塔が急激にメタボ化していく様は圧巻でしたが、 それにつれて名前をみなくなる人が出てきている…

重力(真中朋久)二周目

やや多い新十首選 かばんの持ち手にぎりしめつつ下を向く眠らむとして眠りゐるならむ 諦念のむしろあまやかにふくらんで午後の酸素は吸ひがたきなり 階段をかけおりてゆくきみのすがたちさくたばねて揺れてゐる髪 若月はすでに地平にしづみたるか風にながれ…

夏鴉(澤村斉美)批評会於東京

参加してまいりました。 盛会でありました。二次会・三次会でご一緒したかたに感謝申し上げます。 批評会では、とにかく上手い歌集との評価が先行し、 青春歌集としての側面がやや軽視されているような印象であったのが 少々不服なところではありました。 も…

重力(真中朋久)

(やや多い)十首選 直言をせぬは蔑するに近きこととかつて思ひき今もしか思ふ 任されて屋上を守るいくとせか凪なればちからぬきて見下ろす あるかなきかのしぐれの雨を頬にうけて暗渠のうへの道をたどりぬ 死者が歳をとることがあるか成人した妹が夢にわれを…

アララギの脊梁(大辻隆弘)

先々週いただきました。ありがとうございました。 アララギ系譜の作家論をまとめた評論集。読み応えありました。 いいと思ったのは「呪われたみやこびと」「写生をこえて」「憂愁の発見」「島木赤彦の写生論」「文学の上で戦うこと」「戦犯の汚名」でした。 …

追悼

ときどきは呼吸のようなことをしてアクエリアスを飲むのもいいね(笹井宏之) 彼の歌は像が焦点を結ばぬように意識をむける奇妙な作りの歌が多いように感じ、 しかしながらそれは本人世界ではある程度の完結を伴っているのだと説得されると このご時世ではあま…

塔1月号

特集は『短歌の今を考える』ということで、10人の論が並んでいる。 その中で最も良かったのは、花山周子の『経済的事情とクオリティーの問題』。 「歌人が歌人たる所以は歌集を出版していること」であるという「セオリー」下では 昨今の不況下において単なる…

風通し その1

各一首選 蕪畑 ぼくらの降りたバス停が錆びているのは初めてじゃない(我妻俊樹) 手品師の右手から出た万国旗がしづかに還りゆく左手よ(石川美南) おもむろに君は小枝をひろいあげかわいた音を冬にかえした(宇都宮敦) 「アセトンに浸けたろか」的なツッコミが…

神楽岡歌会

皆様どうもありがとうございました。 おみやに『風通し』を頂いたので、これから読みます。