アララギの脊梁(大辻隆弘)


先々週いただきました。ありがとうございました。
アララギ系譜の作家論をまとめた評論集。読み応えありました。
いいと思ったのは「呪われたみやこびと」「写生をこえて」「憂愁の発見」「島木赤彦の写生論」「文学の上で戦うこと」「戦犯の汚名」でした。


以下雑感。

  • 迢空が茂吉との論争において、その都会派たることを根拠に論を展開していたのには少々感動を覚えた。
  • 「写生を超えて」の

子規の「短歌革新」とは、つまるところ「和歌の俳句化」だったのである。

から

ここで子規は、かつて彼が否定した助辞中心の和歌的な文体と「調べ」に、陶然と身を任せているかのように思われる。

までのロジックがたいへん興味深い。

  • 岡井隆関連の文章は思い入れがあまりに強すぎて、客観性にやや欠けているようにも思えた。
  • 加藤治郎論である「最後の戦後派歌人」は、一般的な加藤像を反転させて逆説的に論じている。そのような「操作」を強いた「愛憎」の強さを感じてしまうのは穿ちすぎであろうか。