西行の肺(吉川宏志)
歌集 西行の肺 角川短歌叢書 (角川短歌叢書―塔21世紀叢書)
- 作者: 吉川宏志
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2009/08/22
- メディア: 単行本
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十首選
身ごもりし人の済ませし校正の厳しすぎる朱を元に戻しぬ
冬死にし人には冬がいつまでもつづくのだろう薮椿咲く
この島より原爆の火が見えしとぞたしかに見ゆる白き市(まち)見ゆ
ぼんやりと歩いていても帰り着く家 たなばたの笹が濡れてる
妻眠る家に帰れば味噲汁の冷えていたりき上澄みの照る
石版画(リトグラフ)ほどの暗さの雨が降る蝉の鳴かなくなりし林に
この島を出でざる生の一つならむ翅くずれつつ赤蜻蛉とぶ
夢のなか泣いていたのに眼の固い朝が来ており春のガラス戸
ふるさとはみなみにありて雪という名前の少女に会いしことなき
ほととぎす朝闇のなか啼きわたり眠りの弱き妻は身じろぐ
去年の秋ごろいただきました。ありがとうございました。
- あいかわらずの吉川節で、○の歌ばかり。困る。
- 死の歌が相変わらず多い。
- 妹の歌がよいアクセントになっている。
- 家族の歌が大分難しくなってきた模様。
- 遅くなってすみませんでした。