ばんどり(なみの亜子)


ISBN:9784861981364


十首選


山上に集落あればたまさかにおばあを積みて降りくる軽トラ
休日は焚き火男となりにけるきみのフリースの燻製臭よ
橋の下ぶっきらぼうな暗がりに川音のなき川のあること
目を閉じて放尿したり はぐれたる小さき川の一本として
薪小屋にいっぱいの薪を残しきてひとつひとつの断面の冷え
けやきより樫へと降りる鳥のありこの世にたった一人を奪えず
桜花咲くところのみふっくりと頬ふくらませいるのか山は
嫁にゆくきつねの娘を空想す澄ました顔の想いやすきに
古き家の堪え方にして風の日をくっとかいーとか声あげまくる
川の家出でておばあののぼりゆく好きにのぼれる墓までの途(と)は


冬にいただきました。ありがとうございました。
「ばんどり」は「むささび」のことだそうです。
以下雑感。

  • 西吉野→川崎→西吉野という構成。
  • ○がつく歌は西吉野が多い。川崎編は川の歌が多い。
  • 大人の女の歌がいいアクセントになっている。
  • 西吉野の樹の歌はいい歌が多い。
  • 「五新線」の一連はいい。もっと長くてもよかったのではないか。

以上です。