塔1月号


特集は『短歌の今を考える』ということで、10人の論が並んでいる。
その中で最も良かったのは、花山周子の『経済的事情とクオリティーの問題』。
歌人歌人たる所以は歌集を出版していること」であるという「セオリー」下では
昨今の不況下において単なる経済的事情により歌人足り得ない「浮浪児」が激増し、
その彼らが結託してリーズナブルな現在の同人誌繁栄があるという解釈は見事である。


しかし、「浮浪児」というより、より過激にこれら「難民」には少なくとも二種類あるという面は忘れてはならないだろう。
いわゆる「コミュ力」に長け、ゆるやかかつ微温的な連帯でもって同人誌を発行する(できる)人々と、
生来的な資質の故か否応なく孤立へ向かう人々がいるということを。
後者は、偶然の力により瞬間的にピックアップされることがある一方で、
前者は前者間でのやや閉鎖的なコミュニティを志向するという傾向があるように思われる。
歌集批評会への積極的かつ義務的な参加やロジックを超越した引用などの手法によって。


率直にいえば、「コミュ力」を行使することに疲弊した私などは、
孤立した側によりシンパシーを覚えるものである。
ぐだぐだとブログを書いているのもその理由による。
相互扶助的な関係なぞ、文学には百害あるのみであると大見得を切るのも
たまには必要なのではあるまいか。