『駒鳥(ロビン)』(江戸雪)


10首選


人の声いつもとおくに聴こえてたチベット自治区酸素足りずに
ほんのりとぬくい弁当抱きながら桜の声のあんこくを聴く
朝の窓飛ぶもの歩くもの眺め自死にあらざる果て口おもう
ブログブログなんでもブログにかいている手ざわりのないかなしみなどを
あの街の窓に硝子をはめるのはワタシデハナイ 枯葉掃き寄す
ざわめきの水位をすこしあげながらうすやみのなかくちびる享ける
会議中の君に電話をかけているこわれたままの裏木戸のように
この仕打ちもうげんかいと叫びつつからまって咲く雪柳のはな
海列車みんなどこかへ行きたいとねがっていいよまぶた光らせ
スクイズの走者のように来てほしい十月の空ぽっかり澄みて


今夏にいただきました。ありがとうございました。
以下雑感。

  • 暗いテーマが多いが写実的ではない。
  • Ⅱ部との相性がよかった。
  • 植物の歌が全般的によいと思った。江戸雪にしてアララギの伝統が及んでいるのかもしれない