金色の橋(谷口純子)

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十首選


息子はかなき水色の空を仰げばめまいすと言う
小規模の地域スーパー統べる男ゲリラ戦士の気をはなちたる
水面をたたける雨水まっしろに無数にひらく水の唇
髭の男も髭のなき男もわらいおり 戦争で男は呵呵とわらう
うたたねの夢の歌会に旧姓で呼ばれておりぬ花山さんに
猫に巣というものはなくて家ぬちのあちらこちらで箱と化すなり
団塊の男なれども蕎麦打たず世界遺産を夫は愛す
鄙びたるこの趣をたいせつに気楽にかたる旅人われは
にがうりの花の黄色とつゆくさのしべの黄色はおなじ明るさ
ねがわくばその心象に濡れているしろき少女の胸あらんこと


今春いただきました。ありがとうございました。以下雑感。

・猫の歌が圧倒的に多い
・水の歌に特徴
・幻想的な歌にややグロテスクなイメージ。あまり一筋縄でない。
・広島原爆の記憶が背景にみえる