『時の地図』&歌集『眉月集』(本田一弘)

時間SF。舞台は19世紀ロンドン。狂言回しとしてH.G.ウェルズが登場する。始めはアンチSFなのかなと思いきや最後はSFになるという変わった作り。スペイン系の作家のせいか、英米系とは一味違う作り。出来はまあまあだった。

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)


歌集『眉月集』(本田一弘)は今月初めにいただきました。
ありがとうございました。


10首選


おほははがぼたもちをはむやさしさのごとくふるゆき彼岸中日
越のくに射水のこほり古江村 眉にやさしき東風(あゆのかぜ)吹く
をとめらのけだるきこゑのひびきあふ とをてくう、とをるもう、とをるもう。
紅ばなのほどなく咲かむ山形のあがた貫きわが自動車(くるま)ゆく
内戦は語られぬまま過ぎきたり東軍兵に英霊はゐぬ
一鳩兵石田哲大の翔ばしたる白鳩の裔いまいづく航く
みちのくの河童寒がり九州の河童暑がり楽しからずや
暮れ方の信夫の山に灯りたる柚子のくがねのごとくさぶしも
冬ふかむ夜を思へば素枯れたるあじさゐぬらす餅雪匂ふ
月光と綿雪の帽かむりつつ吾妻嶺深く耐へてゐるなり


以下雑感

  • 平明な歌が多い
  • 雪の歌が多い
  • 史実に目を向けた歌も多いが、やや半端なところで表現が止っている