『木曜日のフルット』&歌集『紅き塩』(小澤婦貴子)
半のらねこのフルットと半飼い主の鯨井先輩が主人公のマンガ。フルットがたいへん愛らしい。
- 作者: 石黒正数
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: コミック
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歌集『紅き塩』(小澤婦貴子)は先月末にいただきました。
ありがとうございました。
10首選
いまだ地を踏むことのなき足裏がわが膝の上(へ)に立たむとなせり
重ね着をしてゐる春の霞かな 段丘の端(はな)の薄墨桜
地力なきビルのあはひにしらしらと病衣のごとく桜咲きゐる
みすずかる信濃塩尻ひとり棲み花のあふれぬ庭はさびしゑ
くすぶりて燃ゆる稲屑火(いなしび)風吹けばあかあか燃えてまた鎮もれり
麦の穂を揺らしながらに風の午後<ねんきん得別便>やつて来たりぬ
埋葬を終へれば八ヶ岳(やつ)より吹きおろし線香たけぬほどの木枯らし
人気(ひとけ)なきアパート前に骨となり傘と自転車置き去りのまま
黍なのか粟の穂なのか判らずに垂れる九月の穂に触れてゐる
口薄くあけて眠れる枕辺に修羅の心をわびてわが佇つ
以下雑感
- 塩尻の歌と旅行詠があるが旅行詠の印象がやや薄い
- 「さくら」「盆提灯」の一連がよかった
- なにか家族間の葛藤がある(あった)ようだが、表面だけをなぞっており隔靴掻痒感がつのる