歌集『薄い街』(佐藤弓生)&竜王戦
歌集『薄い街』(佐藤弓生)は今週初めにいただきました。
ありがとうございました。
十首選
透明な指たちにぎりあうまひる春の墓場の花のこみちに
背後から乗られて吐いた春の気の これが亀鳴く声なのかなあ
もうながいこと逆立ちをしていないあたまつっこむ藤の花ぶさ
ももいろのワライカワセミ来るテラスありていのちはいつでもまじめ
いっせいにミシンのペダル踏む学園あたしは赤い暗号を縫う
ガスタンクしずめてしずかしかすがにうすずみいろのくるしさ空は
砂は降る みひらく秋の瞳孔に一億丁のカラシニコフに
新刊のしらしらはゆい断層に指の血すこしのこして帰る
まぼろしのわたしいますよ浴室の框(かまち)にあさく腰をおろして
手ぶくろをはずすとはがき冷えていてどこかにあるはずの薄い街
以下雑感
- コトバで世界を創るタイプ。性の語彙で歌に強弱をつけている。
- 「コラージュ・新世界より#5」「逗留記」「パレード・この世をゆくものたち#8」が良かった。
- 喩や語彙がやや単調かもしれない。素直すぎるところがある。
- カラシニコフの歌などは特にいいと思う。「みひらく秋の瞳孔」というのはおそらく戦死者の死体のことであろう。カラシニコフは、オールドファッションな傑作マシンガン。砂というのはイラクやアフガンを思い浮かばせる。美しく残酷なイメージ。真骨頂だと思う。
http://live.shogi.or.jp/ryuou/
竜王戦。渡辺明竜王防衛。いやあ、凄い凄い。レポートが楽しみ。
名人戦もまだ攻守入れ替えてのタイトル戦の可能性があるんよねえ。
いやあ、世代交代が完全に成ったなあ。