『日米開戦の真実』&歌集『いのち』(宮崎信義)
『日米開戦の真実』は評論。
戦前日本のイデオローグだった大川周明の著書
『米国東亜侵略史』『英国東亜侵略史』を再掲し、
それに対して佐藤優が別章立てで解説をする。
大川のロジックはわかりやすく、
戦前の日本人が開戦を選んだエートスがよくわかる。
当時の土屋文明の意識というのもかなり理解できるようになった。
無論、佐藤も言及しているように、これは朝鮮・中国など「東亜」そのものに対しては
身勝手な理屈に過ぎないわけだが。
佐藤は、大川周明を今再度読み込むことで、多くの教訓を得ようとしている。
私としては、本田△的にいえば、「ごもっともだがオレの考えは違った」というところで、
何をどう応用するかはかなり際どい作業になるように思う。
自分のなかの戦後的価値観がどこまで強固なのかを確かめる材料にしてみてもいいかもしれない。
くだらない陰謀史観モノではないので読んでおいて損はない書である。
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/02/04
- メディア: 文庫
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歌集『いのち』(宮崎信義)は先週いただきました。
ありがとうございました。
十首選
女の髪が茶色になり紫になり白くなる追いつけそうか
家人からは胎児をおろせといわれたがおろさなかった自我があった
松の葉刈りで庭がすっきりした誰をも信用できそうだ
同世代の友殆どいない太陽だけがずっと元気だ
息をする食べる薬を飲むこれが生き甲斐のようになった
生死を越えて性(せい)はまといつくものかこの世とあの世は同じ平面か
枝は曲がりながら空へのびる人や猫はどうしてのびる
うっかり六十九といった六十九(シックスナイン)かえらいこっちゃえらいこっちゃ
肩や腹で息をする鼻水が出ることはよいことばかりとはいきかねる
長女(こ)の車で千五百円の散髪に行く十年前からの知りあいだ
以下雑感
- 口語自由律短歌はわからない。というか、これほど根本的な批判*1が簡単な詩形は存在しないのではないかと思う。現在、口語自由律短歌を行っている人間で、本質的な議論ができる存在があるのだろうか?
- 「いつどこで」「病院の日々」「雨があがって」の一連がよかった。
- 口語自由律短歌はねばりつく。相田みつをと何が違うのか。一行でポエジーを出すときに定型に頼らないのは、無理である。
*1:短歌を作りたくないのなら詩を書けばよい