『東電OL殺人事件』

『東電OL殺人事件』はノンフィクション。


今から14年前におきた伝説的事件の2000年時点でのとりまとめ。
詳細はwikipediaをどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E9%9B%BBOL%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6


そういえば、東電って昔、異常な事件と絡んでいたよな、と思って読んでみた。


昼は東京電力のエリート、夜は渋谷の最下層の娼婦、という
被害者の異常な立ち位置があまりにも有名。
著者の佐野は、しかし加害者として逮捕されたネパール人男性の裁判を通してしか、
事件を語れない。


そもそもこの裁判の検察・警察側のやり方があまりに酷く、
どう見てもネパール人男性は無罪である。
本書も一審で無罪になったところで幕が引かれている。
しかし、実は高裁でひっくり返り、最高裁が上告を棄却したことで
無期懲役が確定したという。
読後、ネットで確認して驚愕した。
検察の信用が失墜した現在の眼から見ると、ありふれたでっち上げにしか見えない。
馬鹿げた話だ。再審をきちんと執り行うべきである。


さて、肝心の東電OLについては、なにもわからない。
最終章に、オマケとして精神科医の談話が載っており、
極度のファザコンだったとか、東電のクソな体質によるストレスだとか、
わかったようでわからないトピックに終始する。
フィクションもいくつか出ているようだが、
二流臭がぷんぷんする*1ので、読む気があまりしない。
佐野にしたところで、東電OLをマグダラのマリアに重ねるような言及をするばかり*2で、
本質とは遠いところを徘徊しているだけのように思われる。


要するに、なにひとつわかっていない事件で、
この社会の病理のストレートすぎる表出だろうという直感が先行するばかりの
都市伝説である、ということだ。
理解できるのは、この事件に「巨悪」なるものが関与しているとするなら、
それはとっくに安全圏に離脱しているということだけだ。


東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

*1:桐野夏生『グロテスク』など

*2:「聖性」などという。大丈夫か