『ご先祖様はどちら様』

『ご先祖様はどちら様』はエンターテイメント・ノンフィクション。
傑作。


作者の高橋秀実が自分のルーツを、なんとなく探っていく。
別に確たる理由も熱意もあるわけではないのだが、
今現在ここに高橋秀実がいる、という現実がじわじわと
これはたいへんなことなのではないか、いや、それは
あなたもわたしも一緒でしょう、ということになっていく。


話は源氏だったり平氏だったり天皇だったり、とつながるが、
どこやらのいくさに負けて流れてきた、とか
戸籍をたどっていくと、一番初めには誰もいなかった、とか、
横浜大空襲で、まわりが綺麗サッパリなくなった、などなど
豊富なエピソードが心地よく展開する。


水の流れのごとし。水のごとく嫌味がない。
そのリズムや語彙、展開・構成は
日本語奏者のなかで屈指だろう。
寝る前なんかに読むと、とてもいいと思います。

ご先祖様はどちら様

ご先祖様はどちら様