歌集『裏島』『離れ島』(石川美南)
歌集『裏島』『離れ島』(石川美南)は先週いただきました。
ありがとうございました。
- 作者: 石川美南
- 出版社/メーカー: 本阿弥書店
- 発売日: 2011/09/01
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: 石川美南
- 出版社/メーカー: 本阿弥書店
- 発売日: 2011/09
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
10首選
過呼吸の止、ま、ざ、る、夜を紙袋口に当てつつ羽ばたいてをり
蝉丸の札はみんなが知つてゐて東西南北より伸び来る手
ぼんぼりにキリンビールと書かれありその下の赤い人青い人
枝豆のさや愛でながら〈パンダの尾は白か黒か〉についての議論
倍速でご覧下さい(かなしみは)コロナビールのレモンの落下
駅前にできてゐる湖(うみ)(昨夜未明、見境もなく打ちにき雨は)
トイレットペーパーに深い指の跡、使へば消えてゆく指の跡
雪の日の野球部員のうるささよ 渡り廊下に緑のマット
アルバート、呼び名はバート 薄茶けた上着一枚きりの友だち
降りつもる木の葉両手で掻きわけてこの森の陰核をさぐれり
以下雑感
堀江敏幸や柴田元幸が評価しているというので期待していたが、あまり良くなかった。
二点のみ述べる。
- 非・歌語を取り入れることだけで満足している
- 草も牛も眠りとろける真夜中に刃のやうな明かりを点す
- 「とろける」は抜群に上手い。文句はない。しかし「刃のやうな」、これはイージー。このワンポイントだけ良い(他が凡)の歌があまりに多い。気が抜けてしまうのか?
- 上役が口にするのは裏庭に関する通りいつぺんのこと
- 「通りいつぺんのこと」を短歌に取り入れたのは彼女が初であろう。それは賞賛できる。しかし、上句は?完全に下に奉仕しており、せっかくの努力がふいになっている
- 草も牛も眠りとろける真夜中に刃のやうな明かりを点す
- 生老病死がない。
- 私の考えでは、ストーリーはいわゆる「四苦八苦」の組み合わせによっても「表現できる」。石川の歌集には、「老病死」が明確に欠けている。あたりさわりのない「ちょっと不思議なファンタジー」の文法をまともに取り入れすぎで、それを使用して「生」を表現している。だが、「老病死」のない状態で「生」など自立できないのである。
以上であるが、今回は返歌を作ったのでそれも置いておく。
物語あまた抱いて向かへども塩の柱となりたる話
返歌の返歌の返歌(2012.2.3)
罪人、山羊、塩
しきしまのやまと山羊座のわが舌はあしのうらより百会に至る