歌集『北二十二条西七丁目』(田村元)
- 作者: 田村元
- 出版社/メーカー: 本阿弥書店
- 発売日: 2012/07
- メディア: 単行本
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歌集『北二十二条西七丁目』(田村元)は先月いただきました。
ありがとうございました。
十首選(☆は一首選)
ドトールで北村太郎詩集読み、読みさして夜の職場に戻る
たぶん痛みを負はねばならぬわれだらうコートの下に樹液を溜めて
涸谷(ワジ)を行く一小隊に若鮎のやうな詩人が ゐないと言へるか
品川は鮫洲の春や弥次喜多の残して行きししやれのあかるさ
☆めづらしくわれは水平に酔うてゐし豊後水道を遠く眺めて
サラリーマン塚本邦雄も同僚と食べただらうか日替ランチ
疲れたらチカレタビーと言つてみる春のでんしんばしらに凭れ
ふるさとの馬鹿と叫べば馬鹿ぢやねえ馬だと返すぐんまちやん
旧姓を木の芽の中に置いて来てきさみは小さくうなづいてゐた
この世にはゐない歌人のお銚子をあたためてゐた熱燗器あり
以下雑感
- 「きつねうどん」「中トロ」「涸谷を行く」「別府歌会」「でんしんばしら」が良かった。
- 全体に前よりも後のほうがいい。リーマン生活への呪詛ばかりなのだが、じめじめしていなくて、無頼感があるのがよい。まあ、それは「作った」ものなんだろうが、成功していると思う。
- いい歌は明らかに良く、それがそのまま小見出しになっているのはもう少し工夫したほうがよかったかも。
- 言葉遊びの歌に滋味が多いので、もう少し追及してもいいのかもしれない。
- 本の歌や固有名詞の歌が歌集に芯を通していて、共感した。
以上です。