『キマイラの新しい城』(殊能将之)

キマイラの新しい城 (講談社ノベルス)

キマイラの新しい城 (講談社ノベルス)


殊能将之の死については、webで多くのひとびとが追悼しており、
ただの読者でしかない私がそこに付け加えることができるのは、
単に、読者としての記憶でしかない。
よって、それをここに記す。


『キマイラの新しい城』は、いまはなき、渋谷ブックファーストで買い、
読んだのは、駒場東大裏にあるフレッシュネスバーガーだった。
このフレッシュネスバーガーは、実は栄えある第一号店である。
ここは私の隠れ家で、いつも焦げ臭いアイスコーヒーを飲みながら、
本を読んでいた。
私は、博士課程最終学年で、博士論文を書いていた。


ところで、『キマイラの新しい城』が、エルリック・サーガを下敷きにしていることを知ったのはその後であり、
あまり評判のよくない新訳エルリック・サーガが一気に刊行されて、
それを読み通してから、
ようやく『キマイラの新しい城』を再読したのである。


当然のことながら、私はいたく感じ入り、殊能将之の本であれば、どんなにクソであろうと、
一生買うことに決めた。
石動の活躍なり、身振り手振りから眼をはなすことはない。
だが、石動が踊ることは二度となかったのだ。


殊能将之は私にとってとても大切な作家でした。