歌集『声を聞きたい』(江戸雪)

声を聞きたい―江戸雪歌集 (塔21世紀叢書 第 254篇)

声を聞きたい―江戸雪歌集 (塔21世紀叢書 第 254篇)


先月頂きました。ありがとうございます。


10首選(☆一首選)


アーモンドタルトはさんで夕ぐれと夕ぐれの木のようにふたりは
ふらふらと春の埃にまぎれゆく たまごのような胸を広げて
きよらかに葡萄包めるセロファンはかがやきにけり朝の厨に
嘔吐するまでけんかして帰りくる子のジーンズをざぶり洗えり
たわたわとまぶしい朱欒(ざぼん)こえあげて泣いた私はきのうのわたし
「あんたなんか」と言われた日もある その声は椿の照葉のようにきれいで
アクセルをふみこむ前にボリュームをあげたり秋にねばる淀川
カーブするときに胸から湧く声を喉にちからをいれてとどめた
そんざいをけしてくしゃくしゃ歩いてるブルームーンおまえだけおまえだけ
☆わたしにはどうすることもできないよ山のむこうのむこうオレンジ


以下雑感

  • 川、水、光などの綺麗な言葉を軸に全体が展開
    • 読んでいてストレスかからないのがよい
    • 川が固有名詞化されているのが結構大きな変化かも
  • 植物名増える。わりとマイナーなのが出てる。あららぎぶり。ちょっとしたアクセント。
  • 個人的には「もうほとんど"資源"がない」と思っているリフレインの歌、に良歌が目立つ。
  • 「言葉」についての形而上な歌が大切に扱われている。ただ、イメージの共有は難しい。
  • 河野挽歌、とくに同性には相当きついところがあったことを思い出すなど。


以上です