『豊作』第四号。


酒重く残るからだをひきながら仕事にむかふ蛭のごとくに(常盤義昌)
アメリカにとりて日本はうす暗し見えぬところで水が流れる(澤村斉美)
ひったりと奥深くまで仕舞い込む乾こうとする夜中の魚を(金田光世)
去ることをとへば遅れてうなづいたきんいろの文字に囲まれながら(西之原一貴)
脱線させたのは私 真っ黒の機関車のした子供いるらし(花山周子)
諸悪莫作ベジタリアンになれたなら明なる酒を飲んで死にたし(井上雅史)
われわれは悲しみに腫れ満月はホールトマトのごとくありけり(北辻千展)


以下雑感。

  • 西之原さんの一連の印象が強い。「液晶の冬」「銀の階段」「識閾」など好きな歌が多かった。
  • 凶作集は、いったい何を狙ったものなのかの"宣言"がついていないため、意図を把握するまでに時間がかかった。「私の凶作談」は皆読ませる。
  • 井上さんの評論は誰もが悩む話であり、興味深く読んだ。論ずること自体も難しい話であるので結論は仕方のないところか。
  • 川野さんのゲスト評論が面白かった。「これは一体何なんだ」という気分に同感。なぜこうなのか、ということに僕自身は答えをもっているつもりなので、他の人の意見を聞きたいところです。


以上です。