『豊作』第五号


次号も待ってます。


各一首選


道がまだ熱をもたない朝方の月にうっすら浮かぶ静脈(金田光世)
石膏像の背後は赤く見えることもありぬ君には告げざりしこと(花山周子)
七発のミサイルのうち三発の着水地点を図に描ける(井上雅史)
隣人に滞納処分の公売を告げたるのちに測量をせり(岡本潤)
プリントにわが髪の毛は写りおり皆黙々とページを繰りぬ(北辻千展)
切り替はりし画面にももが浮いてゐるももためらはず泳ぎはじめる(澤村斉美)
近況を綴るブログは途絶えたり窓を責めくる夜の圧力(常盤義昌)
白灯のひかりのもとにうごく手がしきつめていく冷凍野菜(西之原一貴)
まむかへばいづみにふれるここちして告げるすべてが嘘にならない(光森裕樹)


以下雑感。

  • 全体として、歌数が多いことが印象の強さにつながっておらず、むしろ淡い雰囲気を醸しだしていることが不思議。
  • 澤村さんの一連は対象の幅が広く楽しめた。ある種の貫禄がでてきたのかも。
  • 特集の「THE鑑賞」はとてもいい企画。いろいろ意見が割れたり割れさせているのが楽しい。いくぶん、歌会の醍醐味。
  • 「豊作第一回合宿の記録」は味のある読ませる文章だった。ニヤリとすること多し。歌のほうもこれくらいの力の入れ具合がいいのではないですか。


以上です。