蜀山残雨


蜀山残雨―大田南畝と江戸文明

蜀山残雨―大田南畝と江戸文明


天明狂歌の代表的「歌人」である蜀山人こと大田南畝の伝記です。
人物として破格に面白いうえに著者の博学が南畝の生きた江戸をヴィヴィッドに蘇らせ、無類に面白い読み物となっています。
人間の内面から事柄のキモを類推するオーソドックスな評伝の手法に、日本史のレベルからみた俯瞰的・歴史的な視点が絡み、優れて立体感があります。


狂歌そのものに関しては、今ではあまり見るものがないような気がしますが、
そのエッセンスについては現代でも無視できず脈々とあるように思いました。
要はユーモアをどこに見出すかであります。
狂歌的な歌の価値判断基準というのは、これはある意味ナマモノかもしれませんが、
ナマモノ的な短歌にはかえって相性がよいこともあるのではないか、などと考えました。