歌集『反射率7%』(向山文昭)

歌集『反射率7%』(向山文昭)は先週いただきました。
ありがとうございました。


10首選


エンジニアの終の仕事と選びたりし知的財産特許技術者
久里浜をゆっくりフェリーは動き出し船内テレビが乱れ始める
トコトコと地表耕しふと想う火星に行きし探査機のこと
まだ夏と言えない雲の塊を飛行機雲が串刺しにする
黙禱を促す放送届き来る八月六日のじゃがいも畑に
供養にと飲み過ごしたり一人が骨となりゆくまでの時間を
異動の件伏せたる人の計画書黙って聞きしを今も忘れず
ともにゆく犬の小さき足音も混じりて朝の雪道が鳴る
遠目にはポップコーンが撒かれたるように見えいる柿の花落ち
茶のような飲み方をしてきたビール日暮れの家で飲み直すなり


以下雑感

  • 会社生活、畑のこと、挽歌などバランスよく配置されている。
  • 「朝の公園」「桜前線」「横須賀」「二足歩行」の一連がよかった。
  • 都会の歌よりも田舎の歌のほうがよい。こっそりと詩情豊かな歌が紛れ込んでいるのが面白い。