『イスラム飲酒紀行』

イスラム飲酒紀行』は紀行エッセイ。
傑作。


ご承知の通り、イスラム圏では酒は厳禁である。
著者の高野は辺境探検家であり、呑み助である。
そんな彼が、ここ十年あまりに訪れたイスラム圏の国々で、
意地になって酒を飲もうと努力してみたら、あれ?なんだか酒がみつかって
飲めちゃって、意外に旨いんですけど?という体験ばかりを集めた本である。


もちろん、これらの国々を訪れた理由は別にあるわけで、
隠された酒を飲むためだけの旅行ではない。
ではないが、高野の酒への情熱はやや常軌を逸しているところがあり、
そこが面白い。


中華系娼館に侵入して、まかないと一緒に缶ビールをくらったり、
地元の麻薬を嗜みすぎて酒がどうでもよくなったかと思いきや、やっぱり酒が好きだったり、
貫禄のめちゃくちゃぶりである。素晴らしい。
そして、そのめちゃくちゃぶりから、傾聴に値する文化人類学的名言を導き出してくる。
このひとは本当に頭がいいんだなあ、と思う瞬間である。


文句なしのお勧め。



イスラム飲酒紀行

イスラム飲酒紀行