『密閉国家に生きる』

『密閉国家に生きる』はノンフィクション。


北朝鮮から亡命したひとびとのインタビューを再構成して、
時系列にのせた一連のストーリーにまとめあげたもの。
舞台を北朝鮮第三の都市・清津に限定したこと、
まとめたのが米国人ジャーナリストであること、
などが目を引く。


ある種の「大河ドラマ」になっているため、リーダビリティは高い。
細部が非常に豊富・明確で、リアリティがある。
ディストピア北朝鮮に対し、市井の人々の生活や愛を配し、共感度も高い。
まあ、実はこの「構造」が、私が傑作認定したくない部分であるのだけれども、
それは措いておこうか。
記述もフェアで、好感をもつ。


北朝鮮の惨状はよく知られていることでもあり、新たな驚きは少なかったが、
それでもいろいろなトピック、特に餓死者が大量に出た場面で動揺したことは
記しておきたい。
また、金日成が死亡したときの描写が、印象に残った。
一大洗脳国家のあるじが死んだとき、奴隷化された人民はどうふるまい、
いまやそこから脱出した人間の心にどう刻印されているのか?
それが陳腐であることがなによりもおそろしい。


購入金額ぶんのリターンは確実にあることを保証します。


密閉国家に生きる―私たちが愛して憎んだ北朝鮮

密閉国家に生きる―私たちが愛して憎んだ北朝鮮