『地雷を踏む勇気』

『地雷を踏む勇気』は社会時評ネタエッセイ。
絶品。


3.11、九電のやらせメール、フジテレビの韓流オシ、君が代歌わない教員への処罰問題、そしてなにより、原発災害。


見るからに面倒くさい。私にも経験あるが、こういうのをネタに何か書くと、アホが登場する。
相手になんかしてられないが、自衛のためにIPアドレスをチェックしたりする、友人に弁護士を紹介してもらう、その他いろいろ下らない事実を把握し、牽制する。
やれやれ。


まさに地雷だ。
浮世には触れないでやり過ごしておいた方がよいものが多い。
というか、そういうのを割り切るのが大人の作法だ。
天皇家とか、被差別部落とか、パチンコとか、在日とか、南京虐殺とか、竹島とか、
ネット上では小声でささやきたくすらない話題だ。
でも、皆、意外に知っている、公でもアングラな、そんな話題。


ところが、世の中には奇特なオッサンが何人かいる。
われらが小田嶋隆もそのひとりだ。
なにしろ、元アル中で浦和レッズのサポーターだ。救いがたい。
しかし、抜群の文章を書く。
達意は大前提、ネタにオチは必ず付け、文責は必ず一人で負う。そんなオッサン。
地雷に突っ込んで行き、地雷を丁寧に解きほぐし、事の本質をあからさまにしていく。
すばらしい。


小田嶋は、21世紀の文章「芸人」である。落語家に近い。
私は思うのだが、ネットがこの世に広がって以降、
衒学的な文章家はほぼ消滅した。
だって、ぐーぐる先生やうぃきぺでぃあ先生のほうが
100倍賢く見えるもん*1
関係ないけど、現代詩の論者は少し考えた方がいい。


それはともかく、
いま必要なのはトリビアではなく、ロジックにすら到達していない、
「思考の流れ」、オチへのルートなのである。
小田嶋の用意するオチは、実は極めて健全だ。
誰もが、赤子からスパゲティ・シンドローム状態の婆さんまで、
彼の話を聞いたあとでは、腑に落ちる。


この、腑に落ちることが大切なのである。話にはオチをつけること。
なんでも、話しっぱなしにしない。
放っておくと、花王不買運動なんかしでかしたりするはめになるから。


綺麗なオチは解毒の役目を果たす。
小田嶋隆はわれわれの代わりに危険な毒を浴び、浄化作業をしている
尊敬すべきオッサンだ。


だから私は、彼の出した書籍は全て買っている。
だから、みなさんも買ってごらん、と私は強くいいたいのである。


地雷を踏む勇気 ?人生のとるにたらない警句 (生きる技術!叢書)

地雷を踏む勇気 ?人生のとるにたらない警句 (生きる技術!叢書)

*1:専門的な眼から見ると、ダメなことは一応いっておきます