『奇面館の殺人』

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)


『奇面館の殺人』はミステリ。


久々の館シリーズである。9作目だそうだ。


とかいって、話を飛ばさせすぎましたか。
最近は詩歌の人がブログを覗くことが多くなったので、
少しイントロダクションをします。


およそ二十年前、日本のミステリに一大地殻変動が起こった。
新本格』というジャンルが成立したのである。
それまでは、社会派ミステリがおおむね主役だった。
つまり、殺人者がなぜ殺人をするのか?という動機、が
一番重要だ、とされていたのである。
貧困とか、障碍とか、そういうのが好まれた。
新本格』は違った。動機は「つけたし」でもかまわない。
犯人探しこそが重要であり、
犯人は幾重ものトリックによって護られていなければならず、
名探偵こそがそれを打ち破り、犯人に迫るべきである、
という特殊で狂騒的なドグマが読者を魅了したのである。


旗手は島田荘司という作家だった。
バラバラ殺人を異常なトリックで扱った
占星術殺人事件』が登場したのである。
これが第一幕である。


そして第二幕は当時京大院生だった綾辻行人による
十角館の殺人』によって開かれた。
以降の『新本格』の雛形となった伝説のミステリである。
綾辻は京大ミステリ研というサークルに所属しており、
綾辻以降、京大ミステリ研出身者が二十歳そこそこで
新本格』ミステリでデビューする、という時代があったのである。
ミステリ研に入りたいから京大を受けるというアホもいた時代である。


結局、現在生き残っているのは、綾辻や法月などごくわずかであるが、
やはり彼らはレジェンドなのである。


さて、綾辻はその後サボりつつも『館シリーズ』を書き続けてきた。
その最新作が本書『奇面館の殺人』である。


なんかもう面倒になったので、言いたいことだけ言う。


出来はまあまあです。小ぶりは小ぶりです。
ファンなら普通に満足できます。
でも『キングを探せ』のほうが上は上です。
買っても損はしません。文庫落ちを待つのもいいでしょう。


私のシリーズの評価は以下のようなものである。
で、奇面館はその他の下の方かな、という感じである。


時計館≒十角館>その他>(越えられない壁)>暗黒館


まあ参考にしてください。では。