日本逃亡幻譚

『日本逃亡幻譚』は文化人類学書。
傑作。


最近、熊野関係本を読み漁り、中上健次読み返したりとかしているが、
やはり補陀落渡海に興味ありありなので本書を紹介。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%9C%E9%99%80%E8%90%BD%E6%B8%A1%E6%B5%B7


この記事みても補陀落渡海ってなんだ?という感じだろう。
端的にいえば、中世に流行ったノリノリの祝祭的緩慢的自殺である。
当然、背後には宗教がある。
これを敢行した一番有名な人物は、平維盛なのだが、歴史上は「熊野で入水自殺」ということになっている。
まあ、そのとおりなのだが、そうではない。彼は補陀落渡海をしたのである。
ちなみに「熊野で入水」というのはたいてい補陀落渡海である。


松田修は「日本脱出願望」をネタにいろいろ思考を広げて補陀落渡海を考察するのだが、
これが面白い。
一番面白いのが、ラストが船出する一群の物語、というのがあって
その代表として西鶴を挙げているところである。
あるいは浦島太郎を考察する。
そして最後には与謝野鉄幹が登場し、我々歌人も安穏とはしておられなくなるのである。


これは日本的なものだろうか、
西洋では、例のアトラスの柱の向こうのアトランティスがあったが、補陀落渡海みたいな話は聞いたことがないな、
やはりインド・スリランカには原型があったのか、インド洋広いしな、
中国はむしろ琉球や日本が具体的な補陀落浄土的な場所だったんではないか、
北米大陸にはそういうのあったのか、イースター島の神話やコンチィキ号はあれは補陀落渡海だよなじゃあ人類的な発想か、
みたいな妄想ができるので、補陀落渡海はあつく語りたいところである。