水原紫苑『光儀』


春ごろいただきました。
ありがとうございました。


10首選(☆1首選)
(漢字はすべて旧字です。引用が難しいので、一部のみ旧字にしています。ご容赦ください)


丹頂の鶴は食むべし真珠[しらたま]は酢に溶かすべし泥のごと死ね
あやまたず地獄に落ちてかの死者と相見む無限回問はむ敗戦のこころ
藤圭子仰向けに落ちて死にたりと水仙の野に告ぐるこころよ
くつろぎて水月を見るくわんおんはくわんおんに在る御身を忘る
  『シュレーバー回想録』
あかねさすロゴスの果てのシュレーバー神宿すべく子宮を得たり
生きながらわが雙[さう]の耳、天界へ昇りけらしな雲は私語なす
  「私は言葉だつた。私が思ひの嬰児だつたことをどうして證すことができよう―」(山中智恵子『みずかありなむ』)
思ひの嬰児、海にあふるるそらに満つ大和歌[やまとうた]こそ裏切るものを
山藤[やまふじ]のくらきに逢へば畏れつつその名問ふなり カッサンドラぞ
黄金[わうごん]の果実の内に碁を打ちし少年二人相分かれたり
☆爆撃に臺盤所[だいばんどころ]吹き飛びて風に舞ひたるそのメニュウはや

  • フィクションにフィクションを重ねている。
  • 力がうまくかみ合うのは、自身のルーツを述べるところで、そこで出てくる沖縄や近衛などの言葉の喚起力が圧巻
    • そうでない部分は、わりとよくある美学で、これはむしろ大衆性の表象なのではないか
  • 白犬のさくらさんがひんぱんに登場してかわいい。やや、八房感があった。


以上です。