短歌同人誌『豊作』第一号(豊作の会)


「豊作の会」は、『塔』の若い皆さんが作った同人誌です。
いただいたのは年初だったと記憶しています。
ありがとうございました。
第一号はいただきものでしたが、次号からは購入する予定です。


選(豊作集より)


太ももへ打ち寄せる波太ももの内に眠る巻貝の寝返り(金田光世)
夢に深く青がまじりて起きる朝妹の焼く魚が匂ふ(北辻千展)
流水にまた流水の重なればくるしくなれり岩かげの蟹(澤村斉美)
背の丈に矢車菊の花の群れあるを小さき指につまめり(柴夏子)
一億もいれば静かに生くべきと頬冴える夜に吸いさしを燃す(塚田雄一)
追憶をこぼさぬやうに天井をあふぐ 風を刻みゆくファン(常盤義昌)
橋渡る横顔はみな人波に流されながら風のかたちに(西之原一貴)
目の色の少しおかしい鳩がくる炎昼もろに後退りせり(花山周子)


案外と自意識をてらいなく出している歌が多いと思いました。
地名などの「ハード」な固有名詞がほぼ使われないこと、
社会詠は「ライト」なものも出てこないこと、
総じて時空間、特に歴史性からは見た目「自由」であること
(それは90年代以降、若者はずっとそうかもしれないけど)
など興味深く読みました。