『啄木』

『啄木』は評伝。


啄木満二十二歳の再上京から満二十六歳での死に至るまでの評伝。
著者は歌人なので、歌の良し悪しを色々判断しているところが面白い。


個人的には啄木嫌いの私であるが、ヤツがそばにいたらきっとカネを貸してやったろうとは思う。
思っていたより、いい歌、多いし。いいんじゃないでしょうか。


本書の面白みのひとつに以下の文章がある。全て引用する。

時代閉塞の現状」には忘れられない一節がある。「我々日本の青年は未だ嘗て彼の強権に対して何等の確執を醸した事が無いのである」。この一節である。一九六〇年代後半からの政治の季節の中にいた私たちは、大江健三郎が『厳粛な綱渡り』で活用したこの<強権に確執を醸す>という言葉に熱く鼓舞された。啄木は歌人でありながらすぐれたアジテーターでもあった。


啄木がこの文脈で読まれた時代もあったのである。


啄木―ふるさとの空遠みかも

啄木―ふるさとの空遠みかも